義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保に関する法律案(座長案)が、今国会に上程されようとしている。
http://freeschoolnetwork.jp//file/20160428joubun.pdf
昨年から検討されていた法案から法案の名前が変わり「フリースクール」に関する部分が削り取られた。
以前にも書いたが「不登校を考える会・広島」では、この法案に対して「賛成・反対」の意志表明を出していない。
(*会員は個々に意見表明をしている)
私は「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」に親の立場、会の代表という立場で連ならせていただいてきている。奥地圭子さん、内田良子さんをはじめ全国の先輩のお母さんたちに様々なことを教えていただいてきた。
この法案について「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」では、意見が分かれているようだ。
廃案を主張するグループからの資料には「不登校をめぐる30年の歴史にとって最大の危機です」と書いてある。
不登校の子どもが危ない!STOP!「多様な教育機会確保法」のページ
http://ftk.blog.jp/archives/48212011.html#more
「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」の歴史は長い。不登校の歴史の中でいつも問題意識をもって発言を続けてきた。常に子どもの立場で考えることを大事にしている。それらを学ぶ機会を得て私は自分の価値観を変えることができ、生きづらい(であろう)我が家を変化させることができたと思っている。
だが、会として活動する中で「内向き過ぎないか?」と思うようになった。学校の外からのアプローチではいつまでたっても学校にも保護者にも理解されないままだからだ。私の力不足だったのは否めないが、マスコミなどで報道されても学校や保護者には届きにくかった。
実際学校の中ではどうなっているのだろう?という疑問をずっと持ち続けていた私はスクールソーシャルワーカーという職業を選んだ。
そんな立場(SSWとして)で考える今回上程されようとしている法案は、学校の中にいるものとしては「法律があるので動きやすくなる」ことが多々ある。
学校の中では、不登校児の扱いかたが不透明で教員の感覚に任されている。教員個々の考えに対して他の教員が異論を発することができるだけの根拠や経験がないのだ。
だとすれば、この法律は有効に使えるではないか?
推進・廃案の意見を戦わせている人たちは長年不登校にかかわってきた人たちであり、この法律についての経緯もよく理解しておられるから声高らかに意見を言うことができるが、日本中のどれだけの人がこの法律についてや不登校のことを理解しているのだろうか?
12万人と言われる不登校児の何パーセントが「休む」ことを選択できるのだろう?
さまざまな要因で不登校になっている子どもたちに「休む」ことを保証した場合、それからの人生を誰が守ってあげられるのか?
貧困で不登校になっている場合、給食だけが命をつなぐ食事かもしれない。
子どもだけで家にいることが、命を守ることの保証になるとは限らない。
首都圏や都市部では当然のように話題になる適応指導教室やフリースクールなどが全くない地域のほうが多いのではないのか?その場合、学校中心の教育しか選択肢がないし、行政に頼るしかない。地方の行政は少ない予算をやりくりしているため、保護者などの希望が通ることは難しい。だからこその法律でもある。
家庭の経済状況も都市部のように余裕がある家庭は少ない。公的機関以外の場所に通わせる余裕がないのだ。
今ある経済的格差や地域格差をなくすことができなければ、反対している方たちが訴えている内容は地方在住の不登校児の家庭には全く意味を持たないと感じている。
連休明けには国会に上程されることが決まったようだ。
成立してからが本当の闘いだと私は思っている。